たび猫のギリシャ旅行記

ギリシャ旅行１７日目

ギリシャ旅行１７日目：旅に油断は禁物

　もう当然ここからスニオン岬に行こうという気持ちは失せてしまい、とりあえず自分がどこにいるかわからないので、アテネ市内まで戻ることにした。とにかく町があると思われる賑やかなほうに向かって歩くことにした（タクシーには二度と乗りたくなかった）。

　歩いている間も、私の怒りはおさまらない。運転手を呪う言葉をぶつぶつ言いながらひたすら歩いた。しばらく歩くとやっと賑やかそうな町並みのところまでやってきた。とりあえず近くにいる人をつかまえ、自分が一体どこにいるのかを聞いてみることにした。

　たまたま目の前にギリシア人の若いお兄さんがいた。お兄さんに突然話し掛け、地図を広げながら「私は今どこにいるのでしょうか？」などと聞く間抜けな私。一瞬訳がわからず焦るお兄さん。私は今までのふつふつとしていた怒りがここで爆発し、私がタクシーの運転手にだまされお金を取られ、どこだかわからないところに置き去りにされたという話をとうとうとすると、お兄さんは心から同情し色々親切に教えてくれたのであった。

　お兄さんは、親切に教えてくれただけでなく、「同じギリシア人としてそのような男がいることが本当に腹立たしいし許せない、それに君に申し訳ない、こんなことでギリシアを嫌いにならないでくれ」ということを熱心に言ってきた。

　お兄さんはギリシアの軍隊の人らしく（たしか海軍）、「自分はこれから用があって忙しいが明日なら時間が空いている。これが僕の電話番号だから明日ぜひ僕に電話してくれ。お金を取られてしまって大変だろうから、明日僕がアテネのあちこちをバイクで案内するから」とまで申し出てくれたのだ。

　そのお兄さんが端正な顔立ちのめちゃめちゃかっこいい人だったこともあり、その優しさもあり、本当にお兄さんについていきたくなってしまった＾＾；あやうく惚れてしまうほどのお兄さんであった。もちろん次の日お兄さんに電話することはなく、お兄さんとの縁はこれで終わってしまったが、ちょっと惜しいと思わなくもなかった。

　このお兄さんのお陰で、私は無事自分がどこにいるのかがわかり、アテネまで戻ることができた。タクシーのおじさんにお金を取られた直後は、怒りで頭がいっぱいになっていたが、あとでよく考えればお金を取られただけで無事に戻ってこられたということだけでもありがたいことだったと思った。あのままどこかに連れ去られ、乱暴されていたかもしれないし、最悪命もなくなっていた可能性もあるのだ。

　今まで色んな人に親切にされて、すっかり油断していた私にとって、これはいい警告だったのかもしれない。お金だけで済んで、運が良かったとも言える。やっぱりどんなにいい人ばかりに出会っても、旅において油断は禁物ということを痛いほど学んだ私であった。

　こうして、結局私はスニオン岬には行かずに終わってしまった。スニオン岬の夕日は幻と終り、その後出会った他の旅行者からスニオン岬の素晴らしさなどを聞き、あのタクシー運転手の顔を苦い気持ちで思い出すのであった。私にとってスニオン岬は今でも、行ってみたいけどちょっぴり苦い思い出のある地名となった。

　アテネに戻った私は、腹巻の中にまだお金は残っていたのもののまだもう少し観光もしたかったので、減ってしまった所持金を補うために、初めてクレジットカードのATMでキャッシングをしてみることにした。

　何しろ初めてだったし外国だったので、どうやっていいのかわからない。私がなかなか終わらず後ろでしびれをきらしていたギリシア人の男性が、怒ることもなく親切に使い方を教えてくれた。私はどうやら暗号番号を入れていなかったらしい＾＾；基本的なミスだった。

　やっぱりここでもギリシアの人は親切であり、どこの国でもそうだがほとんどの人がいい人でも、中にはあのように人からお金をまきあげようとする一部の輩がいるので、気をつけなければいけないのだと思った。

　それにあのタクシーの運転手にお金を取られた私にも非がなかったとはいいきれない。油断していたので相手の言うことをすべて信じていたし、カーッとなって冷静に対応できなかったことも良くなかった。日本での日常生活においても言えることだが、犯罪に巻き込まれないためにも、常日頃から自分の気持ちや態度を見直しておく必要があると思った一件であった。

　この夜は、嫌な気分を晴らすため、シンタグマ広場近くのNeonというレストランに行き、リッチにパスタや他のものを色々頼み、お腹いっぱい食べ、さっさとホテルに帰って寝てしまった。ギリシア滞在あとわずか、残りの時間はまた良いものにしなきゃ！

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