お二人はかなりの高齢に見えた。素朴なギリシア人といった感じで、ギリシアの映画にでも出てきそうな感じだった。おばあさんは愛想が良いわけではなく、私に説明してくれる時もにこりともせず、クールにジェスチャーで教えると言った感じだ。おじいさんは無口で、だまってその様子を見つめている。
私は最初、そんなおばあさんの様子を見て、私のことが嫌いとまではいかなくても興味はないのだろうと思っていた。だから、私は待っている間もガイドブックを読んだりして、自分の世界にふけっていた。
しばらくするとおばあさんは、自前のパンを袋から取り出し、おじいさんと食べ出した。驚いたことに、おばあさんは無言で私にパンを差し出し、“食べろ”とジェスチャーで言う。私は突然のことで戸惑い、おろおろしていると、“いいから食べろ”とまるで孫にでもあげるような感じで私にパンを渡してくるのだ。
おじいさんを見ると、ニコニコしている。私はその二人の優しさに胸が熱くなるような気がした。きっと私のことをかなり幼く見ていたのだろう。そしてほっとけないとでも思ったのだろうか。言葉は通じないのに、私のことを気にかけてくれているその優しさが伝わってきて、本当に本当に嬉しかった。 私も言葉は通じないのかもしれないが、心をこめてお礼を伝え、パンをいただいた。
こうしている間に、バス停にはだんだんと人が集まり始め、やっとデルフィ行きだと思われるバスがやってきた。おばあさんたちと一緒にバスに乗り、やっとデルフィに行けると安心したのもつかの間、デルフィとは違うと思われる途中の町でおばあさんたちは降りないのに、私だけバスから下ろされてしまった。
私がとまどっていると、おばあさんが英語を話せる人を介して、「ここはデルフィではないが、ここでまたデルフィ行きのバスに乗り換えなければならない」と言っている。はぁ、また乗換えか・・・と思ったが、バス停にもバスにも行き先らしきものは書いてなかったので(私がわからなかっただけかもしれないが)、路線図を持っていない私としては、おばあさんがいなかったらとてもデルフィまでたどり着かなかっただろう。おばあさんに本当に感謝、感謝である。
その途中のバス停で、おばあさんたちと別れ一人降りた私。去っていくバスの窓を見ると、おばあさんが会った時と同じ表情で(やはり笑顔はないが)、私のことを目で追い、ずっと手を降っていてくれているのが見えた。涙が出そうになった。見ず知らずの外国人の私を気遣ってくれて、その温かさが心にしみた。あのおばあさんのことは一生忘れない。
私が着いた町は、デルフィに近いアムフィサという町らしかった(多分)。その町のことは、まったく知らなかったが、こじんまりとしていて、私のイメージの中のヨーロッパのリゾート地といった感じのきれいな町だった。空気もきれいで景色もきれい。ここでデルフィ行きのバスがわからなかったら、ここに滞在してもいいと思ったほどだった。
アムフィサに着いたのは、14時くらいだった。デルフィ行きのバス停はすぐにわかり、次は15時30分に発車するという。まだまだ時間があったので、隣にあるカフェみたいな小さなお店で、お昼の代わりのピザみたいなパンを食べた。そこのお店のおばさんも素朴で親切で、私に優しく接してくれたり、サービスにお水まで出してくれたりした。
ピザもとてもおいしく、のんきにほおばっていたら、「5分以内に出発できれば、今すぐバスに乗せる!」と言われ、ピザを慌てて飲み込み、バスに乗り込んだ。あれは一体なんだったのかよくわからない。私のために出発してくれたとも思えないし、時刻表以外のバスがたまたま通りかかったのか・・・???
とりあえず大慌てでアムフィサを出発し、30分くらいで無事にデルフィに到着した。カランバカから長い旅路であった。
マタニティ日記 |
看護師転職記 | 保健師学校の思い出 | 看護師のお仕事! |
看護師のお悩み相談室 |
プラハ旅行記 | イタリア旅行記 | ポルトガル旅行記 |
ギリシャ旅行記 | 南欧・モロッコ旅行記 | みんなの旅行記 |
福岡旅行記 | 長野旅行記 | 那須・鬼怒川旅行記 |
子連れ家族旅行記 |
読書・食べ歩き日記 |
旅行大好き・たび猫!ホーム |
カンボジア&タイ旅行記 |
このサイトはリンクフリーです。好きなページにリンクを張って頂ければと思います。
たび猫のギリシャ旅行記