ギリシアとトルコ、食べ物などはお互い似ているが、町の雰囲気(宗教が違うのだから当たり前かもしれないが)や人々の性格などがまったく違うような気がするのだ。やはり両方の国をくらべると、トルコはどことなくアジアの雰囲気があり、ギリシアはヨーロッパという雰囲気を醸し出しているような気がしたのだ。
しかし、トルコに行くまで私は、ほとんどアジアの国々しか旅行したことがなかったので、イスタンブールに行った時には、この時と違う感想を持ったのである。アジアの国々を旅行したあとトルコの国に行くと、トルコはよく西洋と東洋のあわさった国と言われるだけあって、今まで見たアジアのどの国よりもヨーロッパの雰囲気を醸し出していて、“ああ、ここはもうヨーロッパなんだ・・・”と思ったのだから、不思議である。
ついでにトルコの人たちは、外見もアジア人ぽい(西アジア系)人と、ヨーロッパの雰囲気を漂わせている人の2種類がいたように私は感じた。なるほど血も混ざっていて、両方の血筋を引いているのかと思ったものだ(あくまでも私の感想です)。
それに人々の性格も、私にはトルコとギリシアの2カ国の間でははかなり異なるように感じた。トルコに行った時は、人々からアジア人のあのエネルギッシュな感じを強烈に受けたが、ギリシアではやはりそのような雰囲気をあまり感じず、何となくもっと紳士的な雰囲気を感じたのだ。これらはよくよく考えてみれば、民族も宗教も経済力も違う国なのだから、当たり前のことかもしれない。
私が会った多くの日本人も同じ様なことを言っていた。イスタンブールなどを歩いていると、私もそうだったが、客引きの声が後を絶たないのに、ギリシアではあまりそのようなことはない。
もちろんどの国にも、スリや引ったくりなどの犯罪者はいるし、スキのありそうな若い日本人の女の子がボーっと歩いていると、すかさず声をかけてくるような人はいるが、断然その数が違うのである(トルコのほうが圧倒的に多かった)。
私はトルコの人たちにもとても親切にしてもらったし、トルコの人たちに感謝もしている。それにイスタンブールの町は大好きで、またいつか行ってみたい町の一つとなっているものの、ギリシアの町のほうがゆったりと、安心して歩けると感じたのであった(私はトルコにはイスタンブールしか行ったことがないので、それ以外の町は違うかもしれません、あしからず)。
私にとって、アジアの国々は、刺激的でエネルギッシュだが少々体力を要するところ、それに比べヨーロッパの国々は、ちょっと遠くて疲れるけど、落ち着いていて大人の旅行を楽しむにはもってこい、といった印象をこの時感じたのであった。と同時に私は、トルコはアジアとヨーロッパのどちらの雰囲気も併せ持つ、本当にヨーロッパとアジアの境目の国なのだなと実感したのであった。もちろん両国ともそれぞれの良さがあるので、どちらがいいかはその人によるだろう。
隣国なのに、全然違うと感じたのは、ポルトガルとスペインを一緒に旅行した時にも感じた。行くまでは、ポルトガルもスペインもどちらも同じ様な感じだと思っていた。しかし実際は、ポルトガルから船で川を渡ってスペインに入った途端、人々から受ける印象がまったく違うような気がしたのだ。
どちらかというと、ポルトガルの人はのんびりとしていて穏やか、スペインの人はエネルギッシュで攻撃的な印象を受けたのだ。これも私の勝手な印象なので、人によっては違う可能性があることをお断りしておく。
よく考えてみれば、韓国と日本、中国と日本を比べても同じことがいえるかもしれないと思った。ヨーロッパの人から見れば、中国も韓国も日本も同じ様に見えるようだが(ヨーロッパに行くと、日本人はよく“中国人?”と聞かれる)、私たちにしてみれば、明らかに国民性が違うような気がする。
それに同じ歴史的建造物でも、中国のものと日本のものでは、まったく異なるものが多いと思う。私は初めて北京に行って天安門や紫禁城などを見たとき、同じ様な顔をした民族であっても、住んでいる場所や歴史的背景が違うとスケールがこうも違うのかと感心したのだ。
私が出会った日本人の話などを聞いていて、ふとこうしたことを考えたのであった。以上の感想は、すべて私の個人的な印象なので、もちろん人によっても感じ方は違うと思うし、そんな単純にアジアやヨーロッパと分けられるものではないかもしれないが、その点は私の感想としてご容赦ください。
ところで私が出会ったカップルも、私と同じホテルに泊まることにしたらしい。きれいだからカップルにもちょうどいいだろう。カップルとは別れ、私はこの後また一人でデルフィの町をぶらぶらしてみた。デルフィの町並みもきれいだし、山もきれい。空気も澄んでいるような気がする。ずっとここにいたいと感じた。
夕方6時30分頃、ホテルに戻った。私の部屋にはバルコニーがついており、そこから眺める山あいの景色もまた最高だった。バルコニーでしばらく本を読んだり、英語の勉強をしたりして、私もここに多いという学者の長期滞在者のような気分になって、ゆったりとした時間を過ごした。
このバルコニーからは、夕焼けも最高のものだった。連なる山々や遠くに見える湖のようなコリンシアコス湾が光を受けて、神聖なくらいの美しさだった。“ああ、デルフィにきて良かった・・・”と一人ため息をついた。
ミコノス島で見た夕焼けも生涯忘れ得ぬものとなったが、デルフィで一人で見た夕焼けも最高であった。
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